本報告書の要旨

1 教養部改組と一般教育改革の経過と課題
(1) 本学では、昭和39年の教養部発足以来、一般教育の理念の実現に向けて、カリキュラムの精選など絶えず検討を行ってきたが、教養部と一般教育課程の制度的な問題の解決のために、昭和54年以来、教養部将来構想検討委員会を設置して、改革について検討を重ねてきた結果、大学設置基準の大網化を契機として、教養部を廃止して国際文化学部を、教育学部を改組して発達科学部を、全学共通教育の実施組織として大学教育研究センターを設置した。
(2) 教養部廃止後の本学の教育システムは、従来の一般教育科目と専門教育科目の区分を廃止し、4(6)年一貫教育体制に改め、人文、社会、自然の3分野に即した主題別編成の「教養原論鍵」 (9主題、32科目)を中心として、専門基礎科目、外国語科目、健康・スポーツ科学、その他総合教養科目によって全学共通授業科目を開講することにした。
(3) 全学共通授業科目に関する企画・実施・評価を行う組織として、14の教科集団(現在は13、人文科学、社会科学、数学、物理学、化学、生物学、図学、自然科学史、情報科学、健康・スポーツ科学、外国語第T・英語、外国語第U・独語、仏語、中国語、ロシア語)を設けて運営することにした。
(4) 新しい教育システムは、平成5年4月から実施されたが、これに対して平成6年6月、神戸大学教育システム検討委員会が設置され、全学共通授業科目の実施体制、一般教育と専門教育の連携について各部局や教科集団の意見を聴取するなど、精力的に調査検討し、その結果を平成8年12月、「神戸大学の一般教育及び専門教育のシステムに関わる当面の諸問題について」としてまとめ、学長に答申した。
(5) これを受けて、平成9年4月、各部局長等を委員とする神戸大学大学教育委員会を設置し、今後の全学共通授業科目の実施について審議を重ねた結果、平成13年4月から、大学審議会答申(平成10年10月)に示された方向をも考慮して、履修単位の上限登録制を年間45単位以内を基本として設定するとともに、従来の教養原論の履修要件と履修方法を一部改め、多様な履修形態を可能とし、外国語科目及び健康・スポーツ科学に選択制を導入することにした。
2 全学共通授業科目の現状
(1) 全学共通授業科目の開講状況
 本学の全学共通授業科目は、教養原論、外国語科目、健康・スポーツ科学、専門基礎科目、その他必要と認める科目等により構成されており、平成5年度から平成12年度までの開講状況は、U全学共通授業科目の現状(10頁)に示すとおりである。
 教養原論は、2年生から非専門の2分野の授業科目を履修することを要件とされ、平成5年度のそれは専門基礎科目と同一名称の教育原論で読み替え可能な授業科目の開講状況である。教養原論の開講は本格的には平成6年度からとなるが、全体としては開講時点からのコマ数を維持しているが、一部の授業科目に開講コマ数の減少が見られる。それは、教科集団所属の教官数の変化に起因する。
 外国語科目も開講時から一定の水準を保持してきているが、未修外国語(第2外国語)の開講状況に変化があるのは、学生定員と受講者の選択が年度により変化し、これに対応して開講コマ数を調整する必要が生じたことが主な要因である。健康・スポーツ科学も開講時からの水準をほぼ維持している。専門基礎科目については、各学部の履修要件により開講状況に多少の違いが生じているところがあるが、全体として安定的に開講されている。

(2) 全学共通授業科目の担当組織状況
 平成5年度からの全学共通授業科目の開講にあたり、その担当を「全学に及ぼす」との評議会決定を受けて、教養原論等の授業科目の開講に責任を負う教科集団を設置して運営することにした。教科集団は、旧教養部所属の教官と、その教官が所属する部局で専門が同じ教官(要項3)及び大学教育研究センター運営委員会が委嘱する当該年度限りの教官(要綱4)から構成される。
 教科集団所属の教官数は、平成5年度から平成12年度の間、全体として発足当時の313名から393名に増加しているが、途中3年ほど停滞状況がみられる。部局別にみると、旧教養部教官を含め学部全体で全員参加の原則で教科集団に所属する複数部局があるが、他方、発足時の旧教養部教官の配置状況から教科集団に所属していない部局も存在する。現在では、大学教育研究センター発足時には成立していなかった部局からの教科集団への参加もみられるが、部局間の格差が認められる。全学共通授業科目の担当を「全学に及ぼす」という基準に照らし、担当組織の現状には課題を残している。
(3) 全学共通授業科目の学生による授業評価
 平成12年度に当センターが実施した全学共通授業科目の学生による授業評価の概要は、昼間主コース及び夜間主コースの学生で「大変満足している」「満足している」と回答した者は半数を超え、一応「合格点」を与えられているが、反面で「不満足である」「大変不満である」と答えた者が10%強いる。学生による授業評価で浮かび上がった問題点として、@1週間の予習時間が20分前後と極めて短いこと、A通常の授業への出席率は60%前後と推測されるが、合格率との間に乖離が認められること、B履修登録者数が500名を超える授業が行われていること、C講義形式の授業の理解度が低いこと、D外国語科目のテキストが難しいこと、が挙げられている。
(4) 全学共通授業科目の担当教官による授業評価
 平成12年度に実施した担当教官による授業評価の結果、次のような現状が明らかになった。@授業計画と実施の状況については、シラバスに沿った授業を進めていて、全般的に「やや良い」と評価されている、Aクラスサイズについては全般的に大きすぎるとの評価がされている、B学生の学習について理解力や反応はよいが、出席状況は外国語と健康・スポーツ科学以外は、最も厳しい評価がされている。
(5) 全学共通授業科目の成績評価
 当センターが実施した平成5年度から平成10年度までのすべての開講科目についての成績評価データの収集・分析の結果、全学共通授業科目の担当教官の成績評価の現状が明らかになった。@対象とした12学期の授業科目の平均合格率は、93%である、A合格率は、健康・スポーツ科学と外国語が高く、講義形式の教養原論は低く、数学系の科目が特に低い、B実験・実習を含む専門基礎科目の合格率は高い、C講義形式で多人数の授業でも、ほとんどの科目の合格率は80%以上で、予習時間が少ない割にはかなりの比率で単位を取得していることが推測される、D今後、多元的な評価基準を明確にして成績評価をすることが必要である。
(6) 教科集団の現状
 本学では。全学共通授業科目の企画・実施・評価に責任を負う13の教科集団を組織して、全学共通授業科目に関する教育を実施している。教科集団に所属する教官は、当センターの規定により学長が任命する。教科集団が抱えている現実的な問題として、次のことが挙げられる。@「一般教育等の授業担当を全学に及ぼす」(平成3年6月27日評議会決定)という基本方針に基づき、全学的な協力により実施する体制を確立すること、A教養原論等の大規模授業を早急に解消すること、B複数学部に所属する教科集団の構成員の連絡・調整を工夫し、運営を改善すること、C専門基礎科目を複数学部・学科を対象とする全学共通授業科目として位置づけるよう検討すること、D多元的な評価基準を設定するとともに、厳格な成績評価について共通理解を得るようにすること。
3 大学教育研究センターの組織と活動
(1) 大学教育研究センターの設置
 当センターは、平成4年10月に発足し、内部組織として研究部と事業部の2部門を設置した。研究部は、@大学及び大学院の教育・研究、入試方法、自己評価等に関すること、A全学共通授業科目の内容・方法、実施方法、評価に関すること、の調査研究を行うことにしており、専任教官4人が所属する。また、全部局からの委員を構成員とする研究部会を設けて、4(6)年一貫カリキュラムの実施状況、授業改善、成績評価等の調査研究を行っている。
(2) 研究部の組織と活動
 当センターは、毎年1回、大学教育・教養教育のあり方等をテーマとする研究集会を開催し、平成12年までに8回実施した。また、設立以来、毎年センター研究紀要として「大學教育研究」(Kobe journal of Higher Education)を刊行している。研究紀要の別冊も発行しており、専任教員の研究成果や大学教育に関するシンポジウムの特集等を収録している。
 さらに、他大学との共同研究も広く行っており、平成8年にSCSが導入されたのを機に、4大学(北大、東北大、九州大、神戸大)との共同研究としてSCSシンポジウムを毎年開催している。国際交流活動として、中国の大学との研究交流、欧米の大学の図書館事情、AO入試の調査を行っている。FD活動は、大学教育・教養教育のあり方、入試方法、センターの組織運営などをテーマに、平成12年まで37回行っている。
(3) 事業部の組織と活動
 事業部は、全学共通授業科目の企画・運営の中心的な役割を担う組織として設置され、発足当初は「全学共通授業科目実施委員会」を設けていた。しかし、現在は、「全学共通授業科目実施委員会」を平成9年度に解消したので、人文科学。社会科学、自然科学、外国語、健康・スポーツ科学、数学、情報科学のグループ別代表がセンター運営委員会に加わりセンターの運営に直接関わるようになった。
 事業部は、センター長のもとで運営されており、専門部会として、@非常勤講師配分検討部会、A障害学生部会、BLL教室運営部会、C情報処理設備運営部会、D学生用図書選書部会、を設けて諸問題に対処している。また、平成8年からSCS事業に参加し、鶴甲キャンパス(神戸1)と楠キャンパス(神戸2)を通信衛星で結ぶ授業を全学共通授業科目の一つとして毎年実施している。
4 学習支援システムの現状と課題
(1) 附属図書館「国際・教養系図書館」は、平成4年10月に国際文化学部及び大学教育研究センター設置の時点で、教養部分館が名称変更して設置され、当センター、国際文化学部、留学生センター等の学生、教職員を主なサービス対象としている。総蔵書は平成12年3月で46万5千冊で、図書収容能力を超えている。施設は、昭和39年竣工で老朽化が著しく、閲覧座席も国立16大学の平均値を下まわり、一般教育の参考図書として十分な蔵書を備えていなかったので、学長裁量経費で改善を図った。
(2) 平成7年度から全学共通授業科目のすべての開講科目の授業のテーマと目標、授業内容、成績評価方法等につきシラバスを作成し、改善を図っている。現在は、インターネットにより公開している。
(3) 教育・研究支援体制
 13の教科集団による全学共通授業科目の実施を支援するため、数学、物理学、化学、生物学、図学、健康・スポーツ科学、情報教育室、LL教室等に支援職員を14名配置している。その内10名は、定員削減等の事情により非常勤職員に依存せざるを得ない状況にある。
(4) TAの現状と課題
 当センターに、本学の各研究科から「共通教育分」として文部科学省から配分される予算の範囲内で、全学共通授業科目の実施にTAを活用していて効果を挙げているが、事務手続きや予算措置などで全学的な観点に立ってTAの活用に改善を図る必要がある。
(5) 広報活動
 当センターの研究紀要として「大學教育研究」を年1回定期的に刊行しており、平成13年3月までに9冊、別冊を10冊刊行している。また、当センターの活動について、ニューズ・レターとして、The Kurihe(News Letter of The Kobe University Research Institute for Higher Education)を年4回刊行して、本学の学生、教職員に各種の情報発信をしている。
(6) 事務組織
 当センターの発足にあたり、旧教養部の施設を使用することになったことに伴い、事務処理体制の効率化・合理化の観点から、旧教養部事務部を再編し国際文化学部事務部において、当センターの事務を掌理している。当センターの支援事務は全学にわたる業務であるため、今後は、学生部の事務体系において支援事務を担当する方向で検討している。
5 全学共通教育の施設・設備
 当センターは、平成4年10月,学内共同教育研究施設として設置され,旧教養部の施設を大学教育研究センターと国際文化学部が引き継いで使用しているが、多いときには7,500人の学生の受講があるので,教室等の施設が手狭の状況が続いている。
 全学共通授業科目を実施する上で,実験施設・設備(物理、化学、生物、地学)、LL教室、語学トレーニング教室、情報処理教育演習室、体育館、武道場、グラウンド、テニスコート等の他、SCS関係の施設・設備を保有しているが、それぞれ使用状況に応じ、施設の改善・拡充を必要としている。
6 大学教育研究センターの財政運営
 当センターの予算総額は約2億円である。予算の財源は、平成12年度までは、@当初配分(普通庁費、教育研究基盤校費、附属施設経費、及び特殊装置維持費)、A追加配分として、全学共通授業科目実施経費(1年次学生の定員×単価+2年次学生の定員×単価×0.5)×0.8=1億2千万円、保守等経費、及び教育研究特別経費、B予算組替え分として、体育施設維持費、及び共通管理的経費である。
 予算支出では、光熱水料、非常勤職員の賃金、雑役務費で共通経費の80%強に上り、新規事業を行う財政運営が困難であった。平成10年〜12年度に学長裁量経費により、語学トレーニング室や情報処理教育演習室の整備等の新規事業を実施した。
7 大学教育研究センターの課題
(1) 教養教育の改革
 当センター発足時より開講してきた「教養原論」を、本学の4(6)年一貫教育体系の中でコモンベイシックとして位置づけ、コア・カリキュラム方式による教養原論を再編し、内容の一層の拡充を図ることが必要である。当センターの研究部は、人文科学(文化と人間、歴史、文学、芸術)、社会科学(個人と社会、現代社会と法・政治、歴史社会と経済、現代社会とビジネス)、自然科学(数の世界、自然の認識)、環境科学(地球と環境、環境と人間)、生命科学(生命の科学、生命倫理)の諸分野にわたる改革案をまとめて、運営委員会に報告している。
 また、新入生を対象とした少人数のフレッシュマン・ゼミを全学的に開講し、大学での学問研究への動機づけを図ることも重要な課題である。
(2)「学習ゾーン」構想の整備
 本学のキャンパス計画で「学習ゾーン」として位置づけられている大学教育研究センター付近の教育施設(鶴甲第1キャンパス)をアカデミック・ゾーンと文化・スポーツ・ゾーンに区分して整備する。前者には、教養教育を実施する教育施設の整備とともに、附属図書館構想との関係で国際・教養系図書室の抜本的な拡充が必要である。この「学習ゾーン」構想を検討するため、関係部局の参加により「鶴甲キャンパス将来構想検討委員会」を設置して、検討を始めている。
(3)大学教育に関するFD活動
 当センターでは定期的な研究集会を継続して開催する他、教科集団ごとにFD活動など多様なFD活動を組織し、教職員の大学教育に関する関心を高めることを引き続き課題とする。
(4)大学教育研究センター研究部の改組
 当センターは、教養教育のカリキュラム、教授方法の開発研究等を担当する研究部を置いてきたが、大学評価・学位授与機構による外部評価システムの発足等、大学教育の環境の変化への対応の必要から、研究部を「教育支援システム研究開発部」「学習支援システム研究開発部」「大学評価システム研究開発部」に再編し、組織上の整備を図ることを課題とし、概算要求書を提出している。


T 教養部改組と一般教育改革の経過と課題

 1 平成4年度神戸大学改革の概要

   本学は、昭和39年の教養部発足以来、一般教育の理念の実現に向けて、絶えず教育内容の検討やカリキュラムの精選などを行ってきたが、一般教育と専門教育との連携の不徹底、教養課題における教育と研究の乖離など、教養部設置の時点よりすでに内在していた構造上、制度上の問題が時間の経過とともに顕在化してきた。さらには、科学技術の発展や社会・経済の変化に伴う大学組織の巨大化、大学教育の大衆化など、その後に生じた様々な要因が加わって、一般教育の理念は十分に実現されているとは言い難い状況であった。

   こうした中でも、一般教育の教育内容や実施方法に関して、教養部制度内での可能な改善工夫を図りながら一定の成果を上げてきたが、教室数、授業時間帯等の物理的制約と、学科目制という教育組織のもとでは授業科目の総合化が困難であったこと、さらには、一般教育等の授業内容の選択に関して不可欠な専門教育担当者との連携が困難であったことなどから、教養部制度のもとでの改善は限界に達していた。

   本学では、教養部制度と一般教育課程について検討するため、昭和54年11月、教養部将来構想検討委員会を発足させ、制度的改革の必要性について検討を重ねることになった。その結果、昭和56年7月開催の教養部教授会で、一般教育の質的向上を図る、既設学部の組織に制度的に影響を及ぼさない、全員参加、の三原則に基づく新学部の創設について確認した。そして、新学部の設立とともに、コア・カリキュラム方式による一般教育の実施を骨子とすることを決定し、昭和57年1月、新学部設立準備委員会を発足させた。

   その後、昭和63年5月に、全学的な教養部等改革検討委員会が、平成元年11月には、一般教育等カリキュラム調整委員会が発足して、新学部の設置を視野に入れた一般教育の改革について論議が重ねられた。神戸大学改革の一貫としての一般教育課程の改革についての調査研究は、「教養科学部設立と一般教育の改革」(平成元年、平成2年)や「教養部改革構想」(平成3年)、「教養部改革調査報告書」(平成4年)などにまとめられている。

   すなわち、一般教育の充実を図るためには、単に一般教育の内容の改革にとどまらず、一般教育と専門教育との密接な結合による大学教育全体の再編成が必要になった.そこで、平成3年の大学設置基準の大網化を契機に、教養部を廃止し、全学共通教育を行う大学教育研究センターを開設するとともに、教養部所属の文系・語学系教官を中心にして国際文化学部を、また、教員養成を主たる目的としていた教育学部を改組して発達科学部を設置した。

   なお、教養部の廃止及び教育学部の改組に伴う教養部及び教育学部所属教官の各部局への移行は、次のとおりである。

移 行 前

移 行 後

教育学部      92

文学部          2

国際文化学部       6

発達科学部       84

教養部      165

文学部          5

国際文化学部      88

発達科学部       31

経済学部         3

理学部         24

工学部          9

農学部          3

大学教育研究センター   2

  2 学部一貫教育体制への転換

   教養部が廃止されたことによって、従来の一般教育科目と専門教育科目の区分を廃止し、4年一貫カリキュラム(医学部医学科は6年)に組替えることにより、学部教育全体の統合性を高めることとした。

   したがって、従来の教養部に所属していた一般教育専任教官と各学部の専門教育専任教官という教育組織の区分をなくし、全学の教官がその教育研究分野と教育経験及び実績に応じて、最も適切な教養教育の授業科目を担当することとなった.学科目制によって縛られ固定されていた一般教育を、より柔軟なカリキュラムに編成し直すことが可能となり、研究と教育の乖離として指摘されてきた教養部の制度的問題を解消した。

   さらに、入学後の学生の専攻を考慮して教養原論を人文、社会、自然の学問分野に即しながら主題別に編成するとともに、専門基礎の授業科目を設定し、1年次から専門科目の履修を可能とすることにより、学部教育全体の統合性を確保した.大学があらかじめ厳選したコアとなる科目を必修として学生に課すことにより、学生の安易な科目選択を排除し、教育効果をより一層高めることとした。

 3 全学共通授業科目の理念と担当組織

 〈1〉全学共通授業科目の理念

    本学の全学共通教育は、それを受ける全ての学生が、幅広い教養を身につけるだけでなく、人間性豊かな知的市民として国際的に活躍しうる人材の育成を図り、社会のあらゆる場での知的活動を行う上で必要な基礎的知識・技術を習得することを目指す。

    そのために本学は、学問研究の発展と大学教育への社会的要請に対応しながら、4()年一貫教育体制のもとで、教養教育を大学教育の総体におけるコモンベイシックとして、教養原論をその根幹に位置づけ、これに外国語科目、健康・スポーツ科学、フレッシュマンゼミ及びその他必要と認める科目を全学的に開講することによって、全学共通教育を行う。

    なお、全学共通授業科目の実施に当たり、本学では、総合大学の利点を生かして、それぞれの専門分野を異にする多様な学問分野の教官が、学生の大学における学問研究への動機づけの機会を拡大するよう、「授業担当を全学に及ぼす」ことをさらに進める。

 (2)大学教育研究センターの設置

    当センターは、従来の一般教育科目に代わる全学共通授業科目を実施する上での新たな責任体制の確立と、大学・大学院教育全般の改善・充実を図るために不可欠とされる大学教育等に関する基礎的研究及びカリキュラムの編成、教授内容・方法、教育組織の点検・評価を行うことを目的として設置した.そのため、当センターでは、自己点検・評価のための全学委員会と連携して、新しいカリキュラムや教育方法を開発し、その効果を点検・評価するための恒常的な研究活動を行う。

 (3)教科集団の組織・運営

    全学共通授業科目に関する教育を円滑に行うため、全学共通授業科目を担当する教官により、次の14による教育研究分野別に教科集団を設置した。

    @ 人文科学教科集団

    A 社会科学教科集団

    B 数学教科集団

    C 物理学教科集団

    D 化学教科集団

    E 生物学教科集団

    F 地学教科集団

    G 図学教科集団

    H 自然科学史教科集団

    I 情報科学教科集団

    J 健康・スポーツ科学教科集団

    K 外国語第T(英語)教科集団

    L 外国語第U(独語、仏語、中国語及びロシア語)教科集団

    M 日本語・日本事情

 (4)大学教育システム検討委員会答申

    平成6年6月の部局長会議において、学長の諮問機関として「本学の教育システム全般にわたって点検・評価を行い改善案を提案する。」ことを目的に、「神戸大学教育システム検討委員会」が設置された。委員会は、全学共通授業科目として実施されている教養原論、外国語科目、健康・スポーツ科学、専門基礎科目、資格免許のための科目、その他必要と認める科目(以下「一般教育等」という。)の授業科目を中心に、その内容、実施体制、一般教育等と専門教育の連携について調査・審議し、平成8年12月「神戸大学の一般教育および専門教育のシステムに関わる当面の諸問題について(答申)」を学長に提出し、教育システム改善のための基本姿勢、全学共通授業科目の内容及びカリキュラム編成、一般教育等と専門教育の連携、教育の実施に関する組織体制等について見直しを提言した。

 (5)平成13年度からの見直し

    神戸大学教育システム検討委員会答申を具現化するため、平成9年4月に各学部長等を委員とする「神戸大学大学教育委員会」を設置し、全学共通授業科目の見直しの検討を開始した。その後、平成10年10月に出された大学審議会答申の提言をも取り込み、平成13年度から実施する全学共通授業科目について、次のような改善を図ることとした。

  @ 教養原論について

    現行制度では、幅広い教養を身につけさせるため、人文、社会、自然の3分野から学部・学科ごとに、非専門分野の2分野各8単位、計16単位を履修させている。これを直接の専門に係る教養原論を除き3分野から履修させること及び履修要件については、3分野から履修させる場合は計20単位まで、非専門分野の2分野から履修させる場合は14単位以上に履修要件を改めた。また、その履修時期は従来2、3年次であったものを、学生の多様な履修を可能とするために、自分野の教養原論の履修時期については1年次とした。

  A 外国語科目について

     既修・未修外国語とも選択制を導入し、選択科目については、より高度でネイティブ・スピーカーによる会話や作文などバラエティーにとんだ授業内容で実施することとし、各学部の教育理念に照らし、選択制を導入した。

  B 健康・スポーツ科学について

     現行制度では、講義2単位、実習T・U各1単位、計4単位が必修であったが、各学部等の意見を尊重し、選択制を導入した。

  C 履修登録上限単位数の設定について

     履修登録上限単位数として、年間45単位以内とし、平成13年度の入学者から導入することとした。

     なお、3年次編入学生及び転入学生に係る履修登録上限単位数については48単位以内とした。