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2019年5月22日に研究シンポジウム「所得保障の現代的課題:EU加盟国の取組」を開催しました

 神戸大学ジャンモネCoE主催で1年目研究シンポジウム「所得保障の現代的課題:EU加盟国の取組」を 2019年5月22日(水)に神戸大学法学研究科大会議室(六甲台第1キャンパス第2学舎)で開催しました。
 関根由紀教授(神戸大学法学研究科)が開会の挨拶にて、講演者のIve Marx教授(アントワープ大学)、 コメンテーターのYannick Vanderborght教授(サンルイ大学)の紹介を行なった後、シンポジウムが始まりました。
 第1部では、Marx教授が「Handbook on In-Work Poverty」(Henning Lohmann教授(ハンブルグ大学)との共著) をもとに「Doing better for the poor」について講演しました。Marx教授は、まず、最低所得の保障の伝統的な柱を強化する必要があるのか、 それとも全く新しい再配分の方法が必要とされるのかどうかについて話をしました。この10年間での欧州での雇用と貧困率を比較した後、 Marx教授は、EUでの金融危機後、最低所得の保障は、その重要性を取り戻りたことを強調しましたが、 最低の所得保障は、実際のところ、ほとんどのEU加盟国において、貧困基準値を下回っていることを指摘しました。 その後、Marx教授は、最低賃金の引き上げに関して、主要な理論的根拠を示し、 ワーキングプアの問題に対処するためにEU圏で行われている追加的な所得補助の方法のいくつかを詳説しました。
 第2部では、Marx教授の論文「For the poor, but not only the poor: on optimal design of redistributive policy」を使って、 同名タイトルの講演が行われました。教授は、貧者に対する便益という目的をもったターゲティングが効果的であるかどうかという問題を扱い、 ターゲティングに関する議論は、学術組織と国際機関の両方で続いていることを示しました。 次に、Marx教授は、所得移転と所得再分配のターゲティングの関係に関するいくつかの有力な研究を紹介しました。 第2部の後半で教授は、アメリカと欧州における主な社会政策の変遷を強調し、これらの変遷がセーフティーネット規定で意味することを説明した後、 最も強力な再分配は貧者に対して非常に強いターゲティングが行われている国々で見られる、 したがって、効果的な再分配のためには、貧困層へのターゲティングが重要になると結論付けました。
 講演に続き、第1部ではVanderborght教授と飯田文雄教授(神戸大学大学院法学研究科)、 第2部ではVanderborght教授と関根教授とのディスカッションが行われました。また、質疑応答の際には、 参加者が各テーマに関連した質問をし、活発な質疑応答の時間となりました。11名が参加したこの度のシンポジウムは、 神戸大学等の研究者と大学院生にとって、日本と欧州の今後の見通しから所得保障の議論を行うとても貴重な機会となりました。

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国立大学法人 神戸大学