1. トップページ
  2. お知らせ
  3. 2022年6月8日に研究シンポジウム 「Interregionalism as Political Strategy: Comparison of Migration Issues and Euro-Asian Cooperation」を開催しました

2022年6月8日に研究シンポジウム 「Interregionalism as Political Strategy: Comparison of Migration Issues and Euro-Asian Cooperation」を開催しました

 2022年6月8日(水)、神戸大学ジャンモネCoE主催、JSPS課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業(学術知共創プログラム)「移住・移民の常態化を前提とした持続的な多文化共生社会の構築」共催で、研究シンポジウム「Interregionalism as Political Strategy: Comparison of Migration Issues and Euro-Asian Cooperation」を開催しました。オンライン(ZOOM)で開催されたこのシンポジウムには、36名の参加者が集まりました。
 司会の櫻井徹教授(神戸大学大学院国際文化学研究科)の開会挨拶に続き、Noemi Lanna准教授(ナポリ東洋大学)が「Asian Politics of the Rohingya Crisis」と題した発表を行いました。まず、Lanna准教授は地域機関において移民問題への対応はいまだ試行錯誤が行われている段階で、学術研究においてもロヒンギャ難民危機に対する東アジアの対応は比較的取り上げられていないと指摘しました。次に、Lanna准教授は、ロヒンギャ問題(ミャンマー西部の差別されたイスラム系少数民族)の成り立ちと、ロヒンギャ族がミャンマーから近隣の南アジア・東南アジア諸国への大量流出することになった背景を概説した後、ロヒンギャ問題に対するASEAN(東南アジア諸国連合)、ASEAN+3(日中韓)、東アジア首脳会議の対応は遅く、断固とした関与がなされていないことを明らかにしました。これは、アジア地域の独自の原則(内政不干渉とコンセンサスによる意思決定の原則を尊重)によるものが大きいとした一方、このアジア地域機関の行動が限定的であったことにより、各地域の主要国(米国、日本、中国)およびEUの影響力や関与の幅を広げることになったと説明しました。
 続いて、堀井聡子准教授(国際教養大学)が「The EU Approach on Migration: Policies and Practices in Recent Crisis Situations」と題して発表を行いました。堀井准教授は、まずEUの移民におけるガバナンスの主な枠組み(シェンゲン圏、統合国境管理システム、欧州共通庇護体制など)を紹介しました。2015年から2017年にかけてのイタリア、ギリシャ、ハンガリーへの移民の大量流入をきっかけに、EUが新たな対応策を導入した大筋を説明し、その新たな対応策の例として、移民管理におけるEU非加盟諸国(トルコ、リビア)との協力やEU加盟国間で負担を分担することを目的とした緊急リロケーションスキームを挙げました。加えて、2020年からの新移民庇護協定の概要を説明しました。発表の最後に、堀井准教授は今回のウクライナからの大規模な難民流入について、2015年から2017年にかけての移民危機とは対照的に、EUは迅速かつ協調的で首尾一貫した行動を示しているとしました。
 お二人の発表に続き、Michael Reiterer氏(EU-Ambassador Ret.)がコメントし、まず、移民、難民、庇護希望者を明確に区別する必要があると指摘しました。ロヒンギャ難民危機については、多国間アプローチの強化と国連の関与の必要性を強調しました。また、ASEANが自由な移動を含む共同市場(common market)の実現を目指している以上、移民問題にも取り組む必要があると指摘しました。Reiterer氏のコメントに対し、堀井准教授は、3つの移民グループ(移民、難民、庇護希望者)を明確に分類することは難しいとの意見を述べました。Lanna准教授は、アジアの地域機関は欧州統合方法に厳密に合わせる必要はないが、自分たちのやり方を見直す必要がある点についてReiterer氏に賛同しました。 参加者の学生からは、トルコなど諸外国のロヒンギャ問題への対応における役割についてやロヒンギャ問題に対する中国の姿勢についての質問があり、両准教授は詳細に返答しました。
 最後に、Reiterer氏は日本とEUの事例を対比しながら、私たちが目指すべき社会のあり方について参加者に問いかけました。日本は依然として移民に対して閉鎖的な社会であり(令和2年、日本において難民認定を受けたのはわずか47名)、一方、EUは移民にとって非常に魅力的な移住地となっている(世界の移民の3人に1人はEUに移住を希望している)としました。堀井准教授は、日本は移民に対してより開かれた国になることを目指すべきだが、そのためには国家レベルで移民についての活発な議論が必要になるとコメントしました。 今回の研究シンポジウムでは、移民という重要なテーマについて非常に刺激的な議論が交わされ、アジア地域主導のさらなる行動の必要性が浮き彫りになりました。


pic1.jpg pic2.jpg

国立大学法人 神戸大学