大教・春











全学共通教育ベストティーチャー賞特別表彰
  

 一年生は第二外国語が必修科目となっていますが、それは知性の形成のために重要だからです。英語を六年以上学んできているので、今や三つ目のリファレンスを身につけるべき時です。そうすることによって、三次元的な思考で考えることができるようになるでしょう。フランス語には、日本語にも英語にもない側面、例えば複雑な動詞の活用や、文法上の性(男性形と女性形)などがあります。
 
 文法の授業では一般的に、フランス語の知識を獲得し、フランス語で書かれた文章を理解することを学ぶことでしょう。それに対してコミュニケーションの授業では、学生は自分が言いたいことを表現するためにフランス語を操らなければなりません。そのために必要となる認知トレーニングは、数学を学ぶ際の認知トレーニングに比肩し得るものです。数学という言語をマスターすると、数字を操って足し算、引き算、掛け算等ができるようになります。表現するという観点からフランス語を学習する時、母語で考えていることを外国語で表現するために、単語や文法を操作しなければなりません。そのために求められる認知トレーニングは、その後の学業全体に対して、早くも一年目から、即座に影響を及ぼします。それはちょうど、小学校から高校までの数学の学習が、学業全体に良い影響を与えるのと同じことです。たとえほんの一握りの人だけが、その後の人生において、学校で学んだ数学の知識のごくわずかしか使うことがないとしても。

 一部の学生は、表現という観点から外国語を学習したことが一度もありません。彼らはこれまでずっと目の前にあるテキストを理解するための勉強ばかりしており、自分が母語で考えていることを外国語で表現するといったことを全く行っていません。表現のための授業の目的は、読解ではなく、自分が言いたいことを表現できるようになることです。そのためには、学習内容を深く理解吸収することが求められます。例えば読解のための授業の中なら、異なる種類の冠詞をまとめて素早く扱うことも可能です。でももし授業の目的が、表現する際にフランス語の冠詞を正しく使いこなせるようになることだとすれば、そんなことは不可能です。日本語にはフランス語のような冠詞が存在しないため、日本人の学生にとって冠詞の習得は容易ではありません。フランス語の冠詞は英語の冠詞に似ている面もありますが、別の面では著しく異なっています。この授業では、冠詞は少しずつ、いくつかの課にわたって、最初は種類ごとに分けて、それから一緒にして様々に組み合わせながら、見ていきます。冠詞が実際の会話の状況の中で使われるので、それが表すものがしみ込むように深く吸収されていきます。

 その上、それぞれの問題は、完全に吸収できるように、様々な角度から取り上げられます。授業で行うアクティビティは多彩で、聞いて繰り返す、機械的な口頭訓練、日本語からフランス語への訳、リスニング、会話練習(アンケート)、対話文を共同で作文する、等があります。

 学生たちは、授業中は常に積極的な参加が求められます。この目的に達するためには、ペアでの学習が重要となります。あと、頻繁に多様なテストを行うことによって、毎回の授業や学期全体を通して、学生たちの集中力を維持することができます。
 







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